はじめに

日本は幾度の大きな災害を経験してきました。
島国であるが故の災害も少なく文献に残っている資料も含めてその経験は他国の比ではありません。
その中でやはり印象的なのは「1995年阪神・淡路大震災」と「2011年東日本大震災」です。
この震災は大きな違いがあり東日本大震災は大きな津波を伴いました。
その際に映像を見ながら人間の無力さも感じた方も多いのではないでしょうか。
今回は自転車のプロとしてなぜ自転車が災害時に重要な役割を果たすのかを詳述します

自転車を使った防災と免災/減災の違いについて

「自転車を使った健康」でもお伝えしております「健康と未病の違い」に少し共通点があります。
また災害対策のプロしかあまり使わない用語かもしれません。
防災」はまさに災害時に最大限に災害の被害を防ぐための施策。まず現地の方を逃がすことです。
その次に災害を最大限に防ぐために関係者がおこなう業務です。
これらはテレビを含めたメディアでも良く目にします。
免災や減災は災害をなるべく最小限にするための施策です。
「免れる(まぬがれる)」「減らす(へらす)」とはあらかじめ準備しておくことですからそこには過去の体験や経験を活かすことが重要と考えられています

自転車を使った防災訓練の概要

防災訓練の主旨や目的から自転車がもたらす特有の利点に焦点を当てます。
訓練の基本的な流れから参加者に求められる行動指針や必要な装備についても触れます

発生時の初動対応
台風などを除き災害発生は「突然やって」きます。
まだ、もう少し」が生命に関係することが少なくありません。
事例としてよく出されるのは火災時の「消火器の使い方」です。
普段から慣れいる人なんていません。
まずは発生時に自転車で何をすべきかを普段から訓練を通じて慣れておくことです
避難ルートシュミレーション
避難とは「安全な場所まで逃げる」ことです。突然の自然災害の時は誰もがパニックに陥ります。
自転車の機動性を活かしてなるべく安全な場所に退避するためにはルートがとても大事です。
これも普段から安全な場所への「ルートシュミレーション」を想定しておきます
移動時の携帯備品確認
初動がうまくいき安全な場所に避難出来ていても何も準備しておらず生活に支障があった。
最近は「防災リュック」などが販売されていますが自転車であればそれ以上に生活に必要な備品を携帯出来ます。
こちらも平時から備品の取捨選択を想定することで発生時には「避難だけに集中」出来ます

次項で自転車の強みを説明しますがその前に発生時の避難においての大事な3項目を取り上げました。
これらは「自転車ならではの特性」もありますので是非私たちにご相談下さいませ

自転車の強みと利用シナリオ

自転車が災害時にどのように迅速な移動やアクセスを提供するか、具体的なシナリオ(例えば避難誘導、救助活動、物資輸送など)を用いて詳細に説明します。緊急通信手段としての自転車の利用例や、さまざまな地形での活用方法についても考察します

迅速な避難行動
前項でも例を紹介しましたが特に「津波などの緊急避難」では徒歩や乗用車移動よりはるかに遠くへの避難が可能です。
東北大震災時には乗用車は混雑渋滞や放置車輌等の要因で平均たった「2キロ」しか避難出来なかったと報告されています。自転車なら20-30分程度で移動出来る距離です
緊急車輌の導線確保
災害時に避難と同様に重要なのは「迅速な緊急車輌の現場派遣」です。
何よりも優先されるはずですが避難に気を取られて肝心の緊急車輌が現場到着に支障をきたしている事例が少なくありません。
自転車であれば避難が緊急車輌の妨げになることは少ないと思います
迅速な救助活動
自転車は避難に最適な移動手段だけではありません。
実は私どもでコンサルをさせてもらっている事案に「緊急活動」もあります。
緊急車輌がいけない場所にも自転車であれば「最速の現場到着」が可能です。

自転車防災の強みには「避難と救助」の両面があります。
もちろん災害時の自転車自体がもつポテンシャルはまだ多すぎて説明しきれていません。
ここからは実例などでその効果等をお伝えします

実際の訓練事例とその効果

防災の日(9月1日-関東大震災が起きた日)には全国各地で防災訓練がおこなわれています。
しかしながら「自転車を活用した訓練事例」となると調査した限りでは数例しかありません

○国交省「災害時における自転車活用社会実験(静岡県浜松市)」→クリック

もちろん研究段階では自転車避難事例も沢山あります、
しかし研究はあくまでもシュミレーションです。実際の実験や訓練がなければ絵に描いた餅です。
ここまで説明した想定をしっかり実験しつつ「防災の日」に訓練として組み込まれることを私たちの活動を通じて実現をしたいです

自転車を活用した防災訓練の実施方法

訓練プログラムを作成する際の具体的なステップやそれを実行するための戦略を簡単に説明します。
加えて安全管理の重要性、参加者への効果的な指導方法についても触れます

訓練プログラムステップ

訓練実行までの段階を踏まえたステップ項目はとても大事です。
項目がないとプログラムとしての最大の効果と実績がありません。実験や考察段階の研究の一部にはあきらかにステップが欠けているか間違っているものが散見しています

避難前に考えるリスト確認
リストを作成して利用するのは「落ち着く」「絞り込む」効果の両面があります。
災害時に一番怖いのは慌てるやパニックになるですが発生時に冷静な人は皆無です。
それでもリストがありそれを見るだけでかなり冷静になります。
避難はとにかく「1秒でも早く」ですがリストを確認するのも「10秒の避難行動」です。
また色んなものを携帯することが避難を遅らせることにつながります
自転車動作確認
言うまでもありませんが「日ごろの定期点検」に勝るものはありません。
しかし災害発生時に万事休すになってしまっては意味が無いのも事実です。
3ヶ所確認で十分です。
○ハンドルが固定されているか
○空気が入っているから(指で凹まないかを確認)
○ブレーキレバーを握ってブレーキがかかるか

これだけです。60秒かかりません
自転車を押して歩いてみる
歩道でもよくあるのが「無理して自転車から降りずに走る」です。
自転車は徒歩以下のスピードになると「転倒の危険性がかなり増大」します。
自転車を押して歩く」ことは訓練で実施しておけば有事の際に状況に応じて活きます。
いつもはスイスイ走れる道路がデコボコで走れないことは想定内にしておきたいです
充電および動作確認
訓練時に確認しておきたい項目に「充電と動作確認」です。
スマートフォンを始めとして電池以外にも充電すれば動作する機器は年々増えています。
普段はコンセントだけで充電していると満充電にかかる時間や動作確認を疎かにしがちです。
充電に関してはコードの種類も不可欠です
二重避難確認
過去の災害事例に記録として残っています。「最初に避難した場所が安全ではなかった」。
特に日本国内では津波は常に想定内の災害です。
その際に安全を言われていた避難場所から更に避難する訓練が必要です

これまでの災害避難訓練で重視されていない項目だけを抽出して説明しました。
これは避難訓練での「必須項目」です。自転車の避難を最大化するための項目です。
被災をゼロに近づけるためには普段の訓練が発生時にはとても有効です

訓練実行戦略策定プラン

プログラムの骨子は理解していただいたと思います。
さらに実行プランを戦略に策定するには細かい項目に落とし込む必要があります。
本項目ではその中でも重要な部分を厳選しています。
これらは特に参加者との確認にも使えるとても有益な実行プランです

実行にかかる時間
避難時には「ストップウオッチ計測」することはありません。
しかし訓練時に確認することはそれが「何秒かかる」かです。防災の観点で言えるのは何分ではありません。
テレビCMは短いもので「15秒」です。あの時間を長いと思うかどうかです。
悲惨な光景を見ているだけ何も行動を起こしていない時に津波なら確実に「避難するには手遅れ」になります。
訓練で時間間隔をつかんでいればいざという時に行動に移せます
マニュアル行動確認
もし「防災行動指針マニュアル」があっても避難時に解釈が複数に渡ると避難現場が混乱します。混乱するだけで避難そのものが実行出来ないこともあります。
行動を起こす前に訓練では確実にマニュアルの整合性を確認しておきたいです。
同じ理解のものと同じ行動する」かの確認は実は非常に重要項目の一つです
伝言ゲーム確認
ゲームではありますがこれも立派な「災害訓練」です。
事実が伝わらないことは災害発生時には「恐怖にも変わり」ます。時として会話には個人の感情が加わるので時にして「事実が歪曲」されます。
結果として謝った情報は被災の大きさに関わります。
シンプルな言葉から「客観的事実が主観的事実に変化」してくのかを訓練で確認しておきたいです

プランとしては少し物足りないか違っていた項目かもしれません。
しかし「訓練が災害発生時に活かせる」ことがプランの目的でもありゴールです。
私たちではこのリストを洗練して実行することが防災に活かせることが全てです

地域コミュニティとの連携

災害対策とは全て限られた地域における住民が意識を高めておこなわなければいけません。
地域住民を訓練にどのように巻き込み地域防災計画への自転車訓練の組み込み方を具体的に説明します。
地域コミュニティの強化と、自転車防災訓練が地域にもたらす利点について解説します

計画全体と備えるべきこと

計画があっても準備が不完全なら訓練はおろか災害時にも最大の効果を出せません。
まずは訓練を始める前の地域コミュニティーにおいて確認することから始めます。
もちろん、地域差もありますから住民同士の意見やアイディアが出しやすい状態にします

免災、減災の大事さを学ぶ
訓練前に必ず「備えよ常に」の大事さを共有します。
地域特性で「水害、火災、土砂崩れ」などの確率からまずは災害をなるべく防げる準備の項目を洗い出しておきます。住民で出来ることと行政がおこなうことも区別しますがそれでも住民が出来ることもかならずあります。
この項目洗い出しの効果は住民同士が災害を現実の災難と「認知する効果」もあります
防災計画における自転車の意味を確認する
防災計画はまず特別な道具や知識が不要です。住民が持っているモノで訓練をします。
その中で自転車は「避難道具」という認知をして欲しいです。
一般自転車は生活の中では「移動手段」ですが訓練では「避難道具」です。
訓練ではまず自宅から最寄りの避難場所までの時間を確認しておきます
避難場所のイメージを共有しておく
避難場所がどこにあるかもですが多くの避難場所は建物がなく広い平地です。
住民なら行ったことがなくても「ああ、あそこね」というイメージしかありません。
前述しましたが災害の大きさによっては別の避難場所に「再度避難」する必要があります。
また避難場所に自転車で避難した場合に自転車を「停める場所の広さ」も認知しておきます。
自家用車は避難人数と比較出来ませんが自転車なら再避難の際にも混乱が起きにくいです

訓練実行前に「災害と避難を意識」することから始めます。
なぜなら訓練の意味を認知する効果に大きな違いが出るからです。
そして何よりも地域連携を具体的にする意味もあります。
地域住民が他人事になることが災害の被害を大きくさせます

自転車+スマートタグ等を使った地域防災

自転車は避難道具として「最速の避難道具」です。
それは移動時の道路占有率はもちろん、搭載する避難道具の多彩さまで多岐にわたります。
私どもでは特に自転車に付加する「スマートタグ(Apple AirTag等)」や「サイクルコンピューター」を使った防災に注目しています

避難地における生存確認
自転車に「スマートタグ」をつけておけば基本的な「避難証明」が可能です。
地図上に点として表示可能なので自転車台数などを「目視出来る」ことは避難地対応に有効です。
避難ルートの詳細データー取得
スポーツ自転車用コンピューターは「GPS対応」なので走行後にデーターを簡単に取得できます。
難しい操作はないので訓練時にも使用しておきルートの選定にも使っておけば自宅などからのルートが解析可能で最適な避難にも利用可能です
駐輪場自転車にタグ機器搭載でのシェアサイクル化
災害時に自動販売機の飲み物が自由に飲めるようになることと似ています。
シェアサイクル各社ではすでに取り組まれていることお聞きしています。
それ以外の自転車においてもスマートタグを装着することで「シェアサイクル」になります。
避難を円滑におこなうなら駐輪場にある誰かの自転車も避難道具として利用出来ます

自転車に付加するこれらの機器は以前はかなり高価かつ機能的には満足がいきませんでした。
しかし「GPS同期と省電力化」が進化し続けて防災に対して十分使える機器となりました。
これらを利用しない手はありません。一刻を争う避難においてとても有益な機器の一つです

自転車を使った災害緊急活動

災害時に「自転車を使う」のは地域住民の避難だけではありません。
災害を最小限に防ぐ活動をおこなう方々です。
自転車の利用は「緊急活動や救助活動」にも有効な場合があります。
私たちはこの災害緊急活動における「自転車活用コンサルタント」もおこなっています。
自転車利用において最大限に活用する手法を熟知しているのでその活動のサポートもいたします

緊急活動ルートの提案
緊急活動は平時の訓練でのシュミレーションが必須です。
自動車やオートバイの能力は平時では有効な移動手段ですが自転車は路面コンディションが最悪の場合は「担いで移動可能」です。
もちろん自動車なら走破可能な場所まで移動して積み込んだ自転車で「災害地点」に到達可能です
緊急活動時の搭載物提案
自転車に乗る際に人間に装備を装着(バッグ等)するだけではなく前後車輪を中心とした「荷台/キャリア」を取付けて緊急活動時似必要な装備を携帯可能です。
荷物の前後バランス」などで自転車の走りやすさは大きく変わります。
コンサルタントでは活動内容に応じてバッグのサイズや機能を選択可能です
平時のメンテナンスポイント提案
メンテナンスは定期点検が必須です。しかしながら災害時に走れなくなることは自転車が活かせないので自転車の機能に応じた「点検整備ポイント」を説明してます。
また万が一にトラブルにあった際の対処法を講義しています

災害時における「緊急活動においての自転車活用」はまだ一般的ではありません。
東北大震災での「自転車の優位性」をご理解頂いた行政機関からのリクエストをいただいております。
その活動の中でのポイントも災害時に活かすためのノウハウを提供していきます

今後の展望と課題

災害に対する防災において今後の展望やそのための戦略におけるそして直面する課題をまとめております。
自転車を使った防災訓練や対策などを考察します

防災の日(9/1)に自転車活用避難訓練設定
防災の日は全国で防災訓練がおこなわれています。近年として大震災を経験しており避難することの大事さも認知が深まっていいると感じます。
そんな時こそ「自転車を活用した避難訓練」も防災対策の一つに是非加えてもらいたいです。
まずは自宅でお持ちの「自転車が走れる」状態なのかの一年に一度の「定期点検」をおこなってもらることから始まります。
現在、公道を走行中の自転車の半数がすぐに走れなくなる可能性があるトラブル予備軍であることからも自転車が移動手段だけではなく「有事の避難手段」であることも認知しもらいたいです
各自治体に自転車防災チーム組織化
現在「南海トラフ」対象地域では大なり小なりの震災対策チームがあるかと思います。
有事の場合にどういう組織でどう対応するか。全国のテンプレートがあるわけではなく土地の特性などにあわせて編成されないと対応出来ません。
乗用車やオートバイが到達出来ない被災地に「最初に到達出来る可能性」のは自転車です。
役所や事務所に一台でも有事利用を想定した自転車が準備されているだけでも組織の戦力が大きく高まります。
もちろん、自転車に付属する「防災セット」などの設備も不可欠ですがまずは自転車があり定期な訓練があるだけでも防災意識が高まります。
そこから地域住民への意識改革が始まります
自転車避難想定の研究チーム組織化
いくつかの大学の研究チームでは災害に対する高度な「研究と実証実験」がおこなわれています。
しかしながら文献を見る限りでは自転車活用に関してはまだ私たちのような自転車業界を活用されていないと感じています。
特に実証実験では自転車の特性を最大に活かたいです。
避難する際に自転車ならではのルート選びもあります。徒歩や車移動とはまったく違うルートも選択可能です。
有事に実験は出来ませんが準備して自転車ならではの「避難ルートマップ」が作成出来るのが理想です

震災大国なのに「防災計画における自転車活用」はまだほぼ前例がないのでその可能性すら認知されていません。上記に挙げた課題には常に「最初の一歩」があります。
幸い、国民の多くが自転車に乗れるので技術た慣れが必要な避難道具ではありません。
まずは政府を含めて行政が中心になって防災における自転車活用を始めてもらいたいです

まとめ

数十年以内に日本国内で予測されている「南海トラフ大地震」。
西日本を中心に人口の約半数が被災する予測も立てられています。現在の国民が経験した過去の地震とは比較出来ないことは間違いありません。
防災」に始まり災害の被害を最小限に留める「減災」や「免災」などは日本の避けて通れない課題です。
しかしながら地震は予測のしにくい自然災害です。
実際に起こってみないとその怖さに直面出来ないために訓練も含めた準備が手薄なのはある意味仕方のないことかもしれません。
備えることの大切さは多くの専門家が声を大にして伝えてくれています。
自転車戦略コンサルタントとして私たちが出来ることは「自転車という毎日の移動手段がその時には防災手段としてのの有効性」を知らしめることです

南海トラフは必ずやってきます。その準備をする際に自転車活用を是非ご検討ください。「避難行動と緊急活動」の両面でやるべきことが沢山あります