はじめに
週明け、敬老の日(9/21月曜日)がやってくる。
日本はすでに長寿大国だ。65歳以上は人口の約3割を占める。街中を歩けば、必ず高齢者に出会う時代になった。
長寿を祝うその日、私たちはつい「ゆっくり楽しんでください」「長生きしてください」と口にする。
つまり、「安静」や「見守り」を連想しがちだ。
しかし、平均寿命が伸びている現代において、高齢者の多くは今も働き、何らかの社会活動を続けている。高齢者にとって本当に必要なのは、守られることだけではなく、自分で判断しながら動き続けることではないだろうか。

外出は、運動である前に「判断」である
適度な運動をしないと、全身の筋力は極端に落ちていく。
散歩や自転車移動は、その筋力を適度に使い続ける機会になる。これを「運動」と定義するかは別にしても、外出は人間にとって気分転換という、とても大切な生活の一部だ。
しかし、もっと大切なことがある。それは、脳を活性化することだ。
運動そのものにも活性化の効果はあるが、移動することにおいて、多くの人が意識していないことがある。
歩くこと、漕ぐことの前に、実は「判断すること」があるという事実だ。
信号を待つか、渡るか。坂を上るか、遠回りするか。その一瞬一瞬の選択が、実は脳を動かしている。
これは子どもの時から変わらない。
もちろん大人になってからは「経験値」があるので、その分、判断する速度も圧倒的に早まる。
しかし、高齢者はこの判断能力も、筋肉同様に落ちていく。
自転車や電動アシスト自転車での外出を、単なる「体を動かす時間」として片づけてしまうと、そこにある本当の価値を見落としてしまう。
私たちはこれを、LME(Lifelong Mobility Education/生涯モビリティ教育)の一部として捉えている。
先日お伝えした通り、LMEは「動きながら考える力」を、生涯にわたって育て続ける思想だ。
迷い、止まり、選びなおす。
その繰り返しこそが状況判断のトレーニングであり、認知機能を支える、最も自然なリハビリになる。
一見すると「そんなことをしたら危ないのでは」と思われがちだが、人間は本来、補助なしで生活したい生き物だ。
高齢者になれば分かることだが、体力や判断能力はいきなり失われるわけではない。
ある時、本人が「おかしい」と気づくだけだ。
もちろん、「年齢に抗え」と言いたいわけではない。
国民の多くは、生まれてから亡くなるまでの「平均寿命」は何となく知っているが、「健康寿命」はご存知だろうか。
健康寿命とは、健康上の問題で日常生活に制限がかかることなく暮らせる期間のことだ。
平均寿命との差が、いわば「不自由な期間」にあたる。
厚生労働省の最新データ(2022年時点)によると、この差は男性で約8.5年、女性で約11.6年。平均するとおよそ10年、日常生活に何らかの制限を抱えながら過ごす期間があるということになる。
亡くなるまでの期間を、動けないまま過ごすのは、誰にとってもつらいものだ。
おわりに
BFLでは、敬老の日に、高齢者だけでなく読者の皆さんにも「健康寿命」という認識を持ってほしい。
移動によって養われるのは、体の健康だけではない。判断能力を落とさないことも、同じくらい大切だからだ。
自転車での移動を通じて学ぶことは、決まったルールの上に成り立つものではなく、常に自己判断が求められる。マニュアルのない判断こそが、LMEが育てたい力そのものなのかもしれない。
