1. はじめに:「モノからコトへ」という手垢のついたバズワードのバグ
「これからはモノ消費ではなく、コト消費やトキ消費の時代だ」
地方創生やサイクルツーリズム(自転車観光)の企画会議において、耳にタコができるほど繰り返されてきたこのフレーズ。しかし、真摯に地域ビジネスのマネタイズに向き合うプロの視点から言えば、この言葉自体がすでに中身の伴わない「死語(バグ)」になりかけているのが実態です。既存の観光インフラは、その本質的な構造をデトックスできていません。
以前の名所編コラムでも喝破した通り、たとえば「1000年の歴史を持つ名所」であったとしても、誕生した瞬間から現代にいたるまで、その評価や価値が全く変わらずに一定だったわけではありません。地元にあるのが当たり前すぎて風景と化してしまい、現代の旅行者のインサイト(本音)に響かなくなっているケースは五万とあります。
物理的な名所や箱物(ハードウェア)でさえそうなのですから、目に見えない「ソフト(情報・体験・仕組み)」にいたっては、その重要性や本質的な価値を正しく認識できている担当者はさらに少なくなります。むしろ、前回のサービス編と同様に、「ソフトやサービス=無料(タダで付いてくるオマケ)」という致命的な認知バグを抱えているケースすら珍しくありません。
2. 有形商品の呪縛をデトックスする:ソフトこそが最強の商品である
ここで私たちの脳内を完全にリフレームしなければなりません。テクノロジーや人間の知恵、仕組みによって提供される「技術や情報」の体系であるソフトは、オマケなどではなく、極めて高い収益性を誇る「立派な商品」です。
有形の商品(自転車の機材、お土産物などのハード)を売るビジネスは、常に「在庫リスク」「売れ残りリスク」「仕入れコスト」という終わりのない消耗戦(バグ)との戦いを強いられます。
しかし、無形のソフトであれば、アイデアと工夫次第で地域のリソースを掛け合わせ、無限のパターンをその場で創出することが可能です。たとえトレンドの変遷によってソフトの「鮮度」が落ちたとしても、それをアップデートし、あるいは廃棄して切り替えることに、物理的なコストや不良在庫の山を捨てるリスクはほとんど(あるいは1ミリも)かかりません。
この「在庫リスクゼロ・初期投資ミニマム・無限のバリエーション」という特性こそが、地域観光において最も競合と差別化しやすく、圧倒的な強みになり得る最強のアセットなのです。
3. ゲストの心を動かし、バイラルを生む「CUEGO流・3つの極上ソフト」
では、ただ自転車で走るだけの単調な旅を、知的なエンターテインメントへと昇華させる具体的なソフトの仕掛け(パッケージ)をご紹介します。
- 【ゲーミフィケーション・ソフト】:巡る施設が立体的な「ビンゴ」になる仕組み ただのスタンプラリーをデトックスし、地域の歴史や文化を紐解く謎を解きながら、特定の店舗や施設を回遊してラインを揃えていくゲーム型アプリ・インフラ。
- 【情報UX・ソフト】:現地名物を最も「おいしく食べるヒント」が瞬時に検索できるシステム Googleマップの口コミをなぞるだけのバグを排し、「この峠を登りきった直後の乾いた身体に、最も響く地元の隠れた名水と老舗和菓子のアミノ酸ペアリング」といった、サイクリストの生体メカニズムに特化したディープな体験情報の提供。
- 【エモーショナル・ソフト】:帰宅したタイミングで自宅に届く「時差プレゼント」 旅の思い出がまだ鮮やかな数日後、現地で体験したストーリーに紐づく特産品や職人からのメッセージが届く、記憶を確固たる資産へと定着させるリピート動線設計。
地域観光の強みを設計する際、まずは「現地の強みを、目に見えるハード(施設、道路、ハコモノ)で考えること」を今すぐ完全にやめましょう。
どれほど立派なサイクルステーションや自転車道を数億円かけて建設(ハード整備)したとしても、その中身を走る「ソフト(体験の質)」がスカスカであれば、旅行者は二度と戻ってきません。
CUEGO(吉村洋三)のコンサルティングは、地域のキーマンへの徹底的なヒアリングを通じて、埋もれている有形・無形のアセットを正確に仕分け(因数分解)します。そして、その地域ならではの歴史や魅力を掛け合わせ、在庫リスクを一切負わずに、来訪者が感動して誰かに紹介したくなる「最高峰の観光ソフト・メニュー」を共に創り上げ、地域に確固たる強みを定着させます。
ハードの呪縛をデトックスし、知恵とアイデアで地域経済を大爆発させましょう。

