はじめに:なぜ、あなたの街の観光メニューは躊躇されるのか?
地方自治体や観光地域づくり法人(DMO)が設計する観光体験とは、本来「日常では味わえない圧倒的な非日常」であるべきです。しかし、多くの担当者が魅力的なメニューを揃えているつもりでも、消費者は最初の一歩を躊躇します。
理由は簡単です。「もし現地に行って、その体験がつまらなかったら損をする」という不安があるからです。 パッケージツアーのように、すべてを画一的に決められた予定通りの旅程をこなす旅は、現代の消費者にはすでに飽きられています。自転車という圧倒的な機動性を活かし、消費者が「まだ見ぬトラブルすら最高の思い出に変わる」と思えるような、新しい非日常の可能性をどう伝えるか。CUEGO流の「旅前(タビマエ)体験DX」の設計図を明かします。
1. 説明書をWEBに陳列するな:旅の前に疑似体験させる「バーチャルお試し」
現地に到着したら、誰もが1秒でも早く観光(サイクリング)を始めたいと考えます。だからこそ、旅に出る前の「WEBサイト」の役割が死活問題になります。
ここで多くの自治体がやってしまう致命的な失敗が、WEB上にサイクリスト向けの「高低差マップ」や「ルートガイド」をただ貼り付けるだけの施策です。これは観光の魅力を伝える「お試し体験」ではなく、単なる無機質な「説明書」です。 自転車愛好者は走る行為そのものが目的ですが、それ以外の大多数の一般観光客(ライト層)にとって、自転車は「その街の魅力を五感で味わうための手段」に過ぎません。実際に走らなくても、自転車でしか見られない景色、立ち寄れない路地の先にある空気感を、WEBや動画を通じて「旅の前に先に味わってもらう」仕掛けが必要です。トラブルや失敗のリスクがないバーチャル体験こそが、リアルな来訪を生む究極のフロントエンド(入り口)になります。
2. 押し付けの感動をデトックスせよ:十人十色のワクワクを生む「共感」のスパイス
WEBや動画で旅前のワクワクを伝える際、画一的な「テレビの旅番組のような演出」は一切必要ありません。現代の観光プロモーションにおいて最も大事なのは、他人のSNSを見て「みんなと同じ(同感)」になることではなく、「自分ならここでどう過ごすか」を想像できる「共感」の設計です。
「同感」を求める施策は、他人が感じた感情をなぞるだけなので、現地のイメージと少しでもギャップがあると、一気に不満へと変わります(イタリアンを食べたいと思って現地に行ったら、中華料理しかなかったというような致命的なミスマッチです)。 しかし、「共感」を軸にしたメニュー作りをしておけば、顧客は自分のライフスタイルに合わせて現地の魅力を主体的に受け止めます。感動とは、上から与えられるものではなく、顧客自らが心で「感じる」もの。想像していたワクワクが、現地のリアルな素材や地元の人のホスピタリティと掛け合わさった瞬間、体験は一気に洗練された個別感動へと昇華します。
3. 記録を超えた「記憶」を創る:自転車というモビリティから始まる物語の設計
自転車という道具は、一度走り出してしまえば、ガイドが常に隣にいて手取り足取り感動を解説することはできません。乗り手は一人、あるいは仲間と共に、風を切りながら自らの足で進むことになります。
だからこそ、出発前の準備段階で「その街で得られる固有の体験」をロジカルにインプットしてもらい、圧倒的な期待感を持って来訪してもらう設計(インフォメーション編の確立)が不可欠なのです。 自転車のペダルを漕ぎ出した瞬間に始まる、顧客だけの「半径10キロの物語」。そこで得られた「期待以上の個別感動」は、帰宅後、SNSや口コミという形で、熱量を持ったまま勝手に外部へと広がっていきます。スマホの画面に記録されて終わる一過性の旅ではなく、顧客の人生の「記憶」になってずっと残り続ける旅。それこそが、「またあの街へ、自分だけの感動を味わいに行こう」という最強のリピート動線を生み出すのです。
おわりに:自治体の担当者と共に、24時間稼働する「物語の入り口」を創る
自転車観光(サイクルツーリズム)の本質とは、素晴らしい道路を作ることでも、最新の自転車を並べることでもありません。WEBサイトやバーチャル技術を正しく連動させ、顧客の中に「自分だけの物語の始まり」を予感させる仕組みを作ることです。
あなたの街のWEBサイトは、顧客に「説明書」を読ませていますか? それとも「ワクワクする物語の入り口」を提供できていますか? CUEGOでは、従来の画一的な観光マップの枠を超え、レーダーチャートの思想に基づいた「自転車観光に特化した体験・情報設計」のコンサルティングを行っています。公的予算が切れてもスルーされず、10年先もリピーターに愛され続ける観光インフラを、CUEGOと一緒にデザインしていきませんか。

